9M4SDX

  9-19 Mar.'07 

 9M4SDX Spratly Islands での運用の様子をレポートします。9M4SDXは、8か月の準備期間を経て実行された私にとって初めての本格的DXぺディションでした。
 160m〜10mに加え、衛星通信でのサービスも行い、総計で約23000 QSOを達成しました。


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 以下に示すのは、DX専門誌「月刊ファイブナイン」2007年6月号に掲載された9M4SDXオペレータによる座談会です。
        写真は、本ページオリジナルです。本文に合わせて写真をセレクトしており、
        時系列的に正しく並んでいるわけではありません。
         Many thanks to 「月刊ファイブナイン」




   司会進行: JR1NHD田中さん
   参加者 : JE1CKA熊谷,JR3WXA八木,JK1FNL小林,
         JQ2GYU櫻井,JJ2VLY櫻井 (参加者敬称略)

JR1NHD
 9M4SDXでのオペレーション,お疲れ様でした。 今回の運用スタイルはどのようなものでしたか。

JE1CKA
 運用を前半組と後半組に分けることで、機材の運搬や運用者の負担を減らしました。またSSB/CW以外にもRTTYや衛星の担当が決まっていました。

JR1NHD
 ほぼ24時間運用でしたね。

JE1CKA
 ホテルのバンケットルームを貸切りで使い、2局同時運用をしました。とても広いホールの上、宿泊棟から離れた場所にあって他の滞在客に迷惑がかからず、無線環境には恵まれていました。
     
ホテルのバンケットルームにシャックを設置

JK1FNL
 衛星運用は前半のみでした。低軌道衛星は、わずかな経験しかなかったのですが、JAとのパスがあるオービットを計算してくださるなど事前に情報を提供してくださった局がいての成果です。とにかく交信に成功してほっとしました。
 ラヤンラヤン島にはチャーター便を使って入るので、持込機材の重量などに制約がありました。 衛星専用の同軸やローテータを持ち込むことが出来れば,もっと上手な運用が出来たかもしれません。
     
カメラ用三脚にセットした衛星用通信用アンテナ

JR1NHD
 ラヤンラヤン島へは、チャーター便なのですか!

JK1FNL
 そうです。コタキナバルとラヤンラヤン島との往復には,ウクライナ製の軍用輸送機を旅客用に改造したプロペラ機でした。なんと乗客も後部ハッチから荷物と一緒に乗り込みました。
     
コタキナバルからバッテリーあがりだった飛行機でラヤンラヤンに到着:-)

JR1NHD
 最初,予定された時刻を過ぎても第一声が聞こえてこなく,随分気をもみました。

JE1CKA
 そのチャーター機がバッテリ充電忘れでエンジンが始動出来ず,出発が3時間遅れたのです。このせいで半日が無駄に過ぎてしまいましたが,R7と14/18/21MHz用スパイダービーム,そして3.5MHz用釣竿ワイヤバーチカルを立て,とにかく一刻も早くHF帯オールバンドにQRV出来るように皆で力を合わせました。この出発遅れ以外は特にトラブルが無く運用が出来たのは幸運でした。
     
広いバンケットルームの中でスパイダービーム組み立て開始
     
こうやって見るとスパイダービームはやはり大きい
     
青空のもとR7を立てる
     
9M2CFによる9M4SDXの第一声

JR1NHD

 多くのハムがスプラトリーに抱くイメージと異なり、ラヤンラヤンは完全なリゾート島だったそうですね。

JJ2VLY
 現地に行ってびっくりしたのは、日本人ダイバーが大勢滞在していたことです。ホテルの部屋に備え付けの説明書も日本語でした。ダイビングスポットとして世界的に有名だそうで,ヨーロッパからのダイバーも多かったです。

JK1FNL
 9M2TO 出雲さんはダイビングの先生で,私達夫婦はダイビングでもお世話になりました。
     
すぐ近くをダイブボートが通っていく(9M2TOとJK1FNLはダイビングも楽しんだ)

JE1CKA
 昨年この島から9M0/9M2TOを運用した出雲さんから,今度は一緒に行こうと誘われたのが始まりでした。現地に詳しい人がリードしてくれるのですから大変有利です。さらにマレーシアの無線連盟MARTS の協力も得られ,一緒に運用しようということになりましたから,DXCCクレジットの面でも心強かったです。
     
9M4SDXを運用する9M2TO

JR1NHD
 最近のDXペディションの場合、各国混合チームでというスタイルが増えましたね。準備などはスムースに行きましたか。

JE1CKA
 主に日本側で機材の調達を、マレーシア側で免許申請や国防省と海軍からの運用許可取得にホテルとの交渉,とうまく分担しました。現地で初めて顔を合わせたというメンバーも少なからずいたのですが、メーリングリストを使って1年近く入念な準備をしていたので、違和感もなく運用に入ることが出来ました。

JR1NHD
 運用で気をつけたことや気がついたことは有りますか。

JE1CKA
 やはりニーズの高いエンティティですから、1局でも多くの交信を心がけました。また,JA以外の局へのサービスにも注力しました。

JK1FNL
 いわゆるDXバケーションではなく本格的なDXぺディションは初めての経験でした。さすがに呼んでくる局数が違いました。そうした中で、呼ぶ側がイラつかず混乱しないような交信を心がけました。たとえば、SSBでは一定のリズムで、とにかくコールサインの一部でよいので返すようにしました。加えてQSOの終わりをはっきりさせるようにしました。呼び倒されることが少なくなるよう心がけたつもりです。

JJ2VLY
 私は,JA1OCZ小林さんの丁寧な交信を横で聞いたのがきっかけとなり,一生懸命見習おうとしました。しかし,コンディションの変化が急激な24MHzや28MHzでは,こちらからのコールバックに応答が無いことも多く,スピード感と交信成立まで粘ることとのせめぎ合いでした。
     
後半組のオペレータ JA1OCZ

JR3WXA
 私はCWが主体でした。コンディションもまだ良くない時期なので、EUから束になって呼んで来るか細い信号には苦労しました。しかもローバンドは夜中ですので,さらに睡魔との闘いもありました。
     
9M8YY/JR3WXAはCW主体でオペレート

JE1CKA
 集計してからわかったことですが,JA以外との交信数が,JAをわずかながら上回ったのには,ある種の満足感を得ました。CWでの交信数がSSBの2.5倍近かったことから得られた結果だった とも言えるかもしれません。やはり遠くの局と交信するのにCWは有効ですね。

JQ2GYU
 前半はRTTY比率が高かったようですが,さすがJF1PJK久木田さんならではでしたね。私の場合,7MHz CWを運用中に欧州からSSBへのQSY要望を多数受けたことが印象的でした。ログを見てみたら過去に「CW」の文字がずらっと並んでいましたから,これは少しSSBに注力しなければと方針変更したんです。それでも集計結果を見てみると,私自身の交信数もCWがSSBの2倍以上になるのですけどね。
     
JF1PJKはRTTYを精力的に運用

JR1NHD
 皆さん,スプリット運用を徹底していたようでしたね。

JJ2VLY
 後半組が到着した際に,JE1CKA熊谷さんからのブリーフィングがあり,申し合わせたのです。ただ,単にスプリットしても1点取りでは効率の良いオペレートが出来ないことに気付き,私としては初めての経験でしたが積極的にスプレッドアウトをお願いするように心がけました。ダイヤルをずらすと綺麗にコールが聞こえてくることを実感し,自分がDXペディション局を呼ぶときもこんな風に聞こえるのかな,と勉強になりましたね。また,応答が無く少し間があく場合がありますが、そういう時はダイヤルを回して探しているのだということも,自分が呼ばれる側になってみて良く分かりました。
(後日談:BS7Hではこの経験が奏功しました。)
     
後半組のオペレータがラヤンラヤンに到着。前半組はこの飛行機で島を離れた

JE1CKA
 ただ、スプリットだからと言って呼び倒すのは決して得策ではありませんね。相手の指示をきちんと聞いて,正しい反応をした方がお互いに気持ち良いですし,効率も上がります。指定無視をしても何の得も無いですから。

JR1NHD
 指定無視と呼び倒しですか。呼ぶ側のマナーの問題ですね。

JQ2GYU
 普段から日本で聞いていても,呼び倒す局や他局へのコールバックでも無視して呼ぶような局は限られているんです。ただ,その悪影響は甚大ですし,何しろ目立ってしまいますから記憶に残っているんですね。今回も,やっぱりこの局だ,と思った瞬間,手が勝手に動いてダイヤルを回してしまうことが何度かあったように思います。自分も気をつけなければいけないな,と大いに反省しました。
     
9M2/JH3GCNは衛星用アンテナを9M2に持ち帰り運用、衛星ファンを喜ばせた

JR3WXA
 呼ぶタイミングというのは難しいと思います。たとえば,信号が弱くてコールサインの一部がどうしても取れないというような場合に,こちらの返信にすばやく対応する局がいますが,実に上手い呼び方だと感心します。どうやって自分の信号を相手にピックアップしてもらうかは、パワーだけの問題では無いんです。

JK1FNL
 自分の呼び方の癖というのは有りますからね。特にCWでは,コールサインを打つ時に字間や語間を詰め過ぎている局が思いのほか多かったです。そのような局は、少なくとも私には取りにくかったですね。たとえばJAを・−−− ・−ではなく、・−−−・− と打ってくるようなケースです。また,2回連続でコールを打ってくるのに、語間を空けないためにサフィックスの文字数がやたら多いかのように聞こえることもありました。サフィックスの文字数が少ない海外局にこれをやられると、一瞬何がなんだかわからなくなります。すぐに気が付きはするのですが、ログの修正に時間を取られます。
 また,バグキーによると思われる癖の強い符号は苦手です。不思議とそういう局に限って強かったりします。で,必死になって癖のある符号を解読したら指定無視の局だった、なんてことも何回かありました。バグキーは本来,正確で美しい符号が出せるキーのはずです。寝不足の頭でも取りやすい符号をお願いします。

JE1CKA
 あと、Dupe QSOは残念です。交信してパソコンのログでDupeと出てくるとログインするのが嫌になります。

JJ2VLY
 海外局で交信した10分後に再度呼んできた局があって,なぜそんなことをするのか不思議で仕方ありませんでした。また開ける時間の限られるハイバンドでは、Dupeの分だけ交信機会が減るので,もったいなく思いました。
     
SSBを運用するJQ2GYUとJJ2VLY

JR1NHD
 Dupeは個人だけの問題では済まないですからね。

JJ2VLY
 あと,他のバンドへのQSY を依頼してくる局も多かったですね。やはり日本人だと頼みやすいからでしょうか。

JE1CKA
 無線で他のバンドに出ているか聞いてくる前に、自分の耳で探して欲しいですね。すぐ横で,訊ねて来たバンドに出ているのに,ということが何度かありました。
     
手前からJE1CKA、JF1PJK、JK1FNL

JR1NHD
 依頼するタイミングも考えて欲しいですね。

JQ2GYU
 数日前に別バンドへQSYしてもらったのに,うまく交信が成功しなかったことをお詫びと共に報告してくる方がありましたが,それなら今からもう一度挑戦してみましょう,という気持ちにしてくれました。実にお見事です。QSYに成功して交信できたときは,こっちの方が興奮してしまいました。あるいはコンディション状態を確認した上での情報提供をしてくださる局もあり,ありがたかったですね。一方でバンドがオープンしているかどうかも知らないまま,単に自分の希望するバンドに出て欲しいという局には,正直閉口しました。
     
前半組のJR7TEQ

JE1CKA
 たくさんの局と交信したいのですが、運用する側は人員と時間に限りが有るので、すべてのリ クエストには応えられません。

JQ2GYU
 18MHz以上でNAやSAとの交信チャンスが少なかったのは残念でした。また、週末に21MHzで小中高校生向けのQRZを何度か出しました。オンフレ周波数を聞くこともアナウンスして,ジュニア局に呼びやすい環境を作りましたが、1局も交信できなかったのは残念です。私達が子供だったときとは違って,アマチュア無線クラブなどが身近にないため,HF帯に出られる環境にアクセスできないのだろうと思います。皆で頭を使ってこの状況を改善しない限り,青少年の育成は難しいでしょうね。

JR1NHD
 12歳の息子さんとは交信できたんですよね。

JJ2VLY
 21MHzと24MHzで交信できましたが,これらは留守宅との連絡のためのスケジュール交信ですから(笑)。21MHzでは息子がFT-817の送信出力を下げてみたいと言い,最終的には500mWにして来ました。それでもちゃんと交信できたのには,ちょっと驚きましたね。
     
50MHzは、衛星運用の前後を除きビーコンを出し続けたが、オープンすることはなかった

     
ハイバンドのアンテナは、スパイダービームほか

     
ローバンドのアンテナは、18m長(!)の釣竿を活用

JK1FNL
 強い局と次々と交信していくのは快適で楽しいことです。ただ、信号の弱い局や海外交信の経験が浅い局といかに交信するかという課題にも,積極的に取り組んだつもりです。とはいえ、コールサインよりも「QRP」を強調して叫び続ける局には疑問を持たざるを得ません。私が運用しているときに2局いましたが、いずれも指定無視,他局との交信中でもかまわずコールなど,ひどいマナーでした。QRPと叫ぶことが免罪符になるとでも考えているのでしょうか。
 スプリット運用で弱い局を丁寧にピックアップするというのは,疲れてくると大変な作業なのですが、一方で頑張り甲斐もあります。私も普段は弱い信号を拾ってもらう立場ですから。
     
HFに加え衛星通信も運用したJK1FNL

JR1NHD
 確かにそうですね。DXペディションに行く側にも、ジュニア局やビギナー局に対する時間配分をするなどといった心の余裕があると,HF人口が増えるかも知れませんね。どんなポリシーで DXペディションをするかというのも,技術論と対峙するテーマかもしれません。

JE1CKA
 今回、日本とマレーシア側でも多くのサポートメンバーが協力してくれました。残念なのは、このDXペディションに初期段階から参加表明していたJA1PCY塚原さんが計画途中で亡くなり,同様にAH0K桜田さんも体調不良で不参加となり,しかもその後に亡くなられたことでした。塚原さんの遺影を日本から持参して、無線機の前に掲げて運用しました。お二人の盟友を失ったこ とが本当に残念です。

JR1NHD
 QSLカードの発行状況はどうですか。

JE1CKA
 QSLカードの印刷と発送はマレーシアのMARTSが作業を進めています。5月下旬にはダイレクト分の返信がお手元に届き始めるはずです。日本からも多くの請求を頂いています。受け取ったカードは、マレーシア側の9M2CF(CHAWさん)が保管しています。たくさんのQSLカードが届いたことをとても喜んでいるそうです。今年のハムフェアに9M4SDXでブースを出展予定ですが,その際に、それまでにダイレクト請求の無かった日本の局宛のカードを持参し,希望する方には手渡しできるように準備を進めています。その後で,残りを日本からJARL経由で発送します。交信した皆様とのアイボールを楽しみにしています。
     
納品されたQSLカード。約2万枚の発行作業が待っている

JR1NHD
 私もハムフェア会場でQSLカードを受け取るのを楽しみにします。どのようなデザインなのですか?

JK1FNL
 印象的だった海と空の青色を基調としたデザインです。

JR1NHD
 小林さんのQSLカードデザインにはファンが多いですから,ますます楽しみです。今日は皆さんありがとうございました。
       
 
       
 

ボツとなったQSLカードデザイン 5つのなかから、下に示したデザインに決まった






 座談会参加者および月刊ファイブナインの了承を得て掲載いたしました。